コーポラティブ方式は入居者によるプロジェクトのはずが...
「コーポラティブ方式」とは入居希望者が集まって「建設組合」を設立して建物をつくり上げていく方式です。
本来であれば、企画会社が募集をする場合であっても同様に、定員が埋まった時点で「建設組合」を設立するのが原則です。
しかし、企画会社によっては定員がいっぱいにならない時点でプロジェクトをスタートする場合があります。
確かにプロジェクトが「遅延」や「中止」になるよりはこの方が良いと考えることもできますが、実際にはこの場合には、一般のプロジェクト参加者にリスクが伴う場合もあります。
企画会社が「組合員」になって見切り発車?
プロジェクト参加者が想定する人員を満たさない状況で「建設組合」の設立を行う場合には、暫定的に「企画会社」や「設計事務所」が代わりの「暫定の組合員」として参加することになります。
この場合には、未決定の住戸については継続して募集を続け、一般の参加者が現れた時点で「暫定の組合員」から「新しい組合員」に地位が継承されます。
新しい参加者が現れなかったらどうなるの?
ここで、疑問になるのが建物完成までに「新しい参加者が現れなかったらどうなるか?」ということです。
この場合には通常の分譲マンションと同じように建物完成後に企画会社が一般の方に販売を行います。
最近では大手の企画会社であっても最後まで参加者が集まらないために、このような販売をおこなうケースが増えています。
企画会社が組合員になった場合の問題
企画会社が建設組合に参加することは「他の参加者に迷惑をかけないため」と前向きに捉えがちですが、実は他の参加者にとって大きな問題を含みます。
本来、コーポラティブ方式とはあくまで「入居希望者が組合を作って事業を進めていく」ものです。暫定組合員である企画会社は実際に入居をすることはないのは当然です。そして、企画会社は「建設組合」から発注を受けてコーディネート料をいただく立場です。
「発注者である建設組合」と「受注者である企画会社」は利益相反関係ですから、「建設組合」に「企画会社」が参加することは決して望ましい関係ではないでしょう。
問題1 利益相反関係
建設組合設立後は建物完成まで建設組合の「総会」で様々な決定を下して行きます。
その中で「暫定組合員」である「企画会社」がこうした総会で議決権を持つということは問題があるでしょう。
もちろん「規約」や「契約」等で「暫定組合員」に何らかの制限を与えることはできても「組合員」であるという立場は変わらないので完全に他の参加者への影響を取り除くことは困難でしょう。
理論上は「暫定組合員」である「企画会社」が自社へのコーディネート料を引き上げるように誘導することや「設計事務所」への優遇などを行うことができてしまいます。
問題2 青田売りの問題
通常の分譲マンションの販売ではその広告の方法が「宅地建物取引業法」により厳しく制限されています。
ここで「青田売り」は禁止をされています。
青田売りの制限とは簡単に言えば「建物の建築確認がおりてない」時点で「広告」や「契約」をすることはできないということです。
コーポラティブ方式であれば問題ないのだが...
コーポラティブハウスの場合には「建設組合」ができた時点で建物の建築確認はおりていません。
それでも広告が許されているのは「コーポラティブ方式」が通常の分譲マンションの売買とは大きく異なり、入居希望者が集まって組合を結成して事業主となって建物をつくりあげる方式だからです。
言ってみれば「コーポラティブ方式」だから建築確認の前に広告を行なって募集することができたわけです。
しかし「企画会社」が「組合員」となって建物の完成後に一般の方に各住戸を販売するとなると通常の分譲マンションの売却方法との違いが曖昧になります。
1,2世帯であれば容認できたとしても実際には半数近くを企画会社の「暫定組合員」がしめ、その多くが建物完成後に企画会社によって売却されるといったケースもあり、この場合には法律的にはグレーゾーンと言えるでしょう。
まとめ
昨今の企画会社のコーポラティブハウスのプロジェクトになかなか応募がないという状況であれば、多少定員を満たさない状況でプロジェクトスタートして建設組合を発足するのも当たり前の状況になってきています。
企画会社は、とこうした措置はプロジェクトの「遅れ」や「中止」よって申込者に迷惑をかけないためと説明するでしょう。
実際のところは、企画会社としても絶対にプロジェクトの中止だけは避けたいと言う本音があります。
プロジェクトを開始した時点で用地の手配や、広告費用などかなりのコストを費やしているからです。
「利益相反」や「青田売り」の問題などを除外したとしても、企画会社は、コーポラティブハウスの利点として「入居者が建物完成までの過程でコミュニティを形成できる」ことをあげているわけですから、自らが組合員となることは決して望ましいことではないでしょう。
今後の期待としては、企画会社が応募者が殺到するような「オリジナリティのあるプロジェクトの企画」と一般の方に「もっとコーポラティブハウスの魅力が伝わる」ような長期的な活動を行なって頂きたいと考えています。